Angela Lorenz / www.angelalorenzartistsbooks.com

アーティストブックに言及した情報というのは、日本語で探すと本当に少ない。
けれど、英語のものはちょこちょこあるので、そういうのもちょっとずつ読んでいこうと思っている。


Angela Lorenz / www.angelalorenzartistsbooks.com

このAngela Lorenzという人はアーティスツ・ブックス(と、彼女は呼ぶ。)を一貫してテーマに据えて作品を製作してきたアーティストであり、このサイトでは、彼女の作品や経歴とともに、「アーティスツ・ブックとは何か」といった内容のページもある。

Artist's Books - For Lack of a Better Name

アーティスツ・ブックス ――ましな名前がみつからなくて

実はこの全文をこつこつ訳していたのだけれど、なんだかこうまとまらなく、面倒臭くなってしまったのでやめた。これはもちろん私個人の精神的・肉体的コンディションに依拠するとことも多分にあるのだけれど、この文章自体のせいでもある。要するに、ある意味で私と同じなのだ。割とダラダラとアーティスツ・ブックスはどう定義され得るか、どういう特徴があるか、購買層はどういった層か、そういったことが書いてあるのだけれど、そんなことはこのブログでゆっくりやっていけばいいことで、何も今回一回分で全てを説明しようとする必要はないし、そんなのなんだかつまらなくなってしまうではないか。それに長いんだもん。疲れちゃう。


というわけなのだが、その中で一箇所印象に残った部分があったので、そこだけ引用します。


The various issues raised above, while attempting to illuminate the genre, also demonstrate why you may have never heard of artist's books. The awareness of artist's books is surely increasing, judging from the astounding number of courses, even university degrees, offered in the book arts around the world, and due to the great number of exhibitions in libraries and museums. Not to mention the numerous book arts organizations and resources on the internet. But the road is slow, and many an enthusiastic gallerist, dealer or venue dedicated to artist's books over the last 25 years closed its doors due to the difficulties of selling artist's books while maintaining overhead costs. To be fair, this is true of contemporary art venues in general and independent bookstores as well. Even the most famous artist's book venue in the world, Printed Matter in New York City, has struggled with chronic debt, unable at times to pay artists for works sold. One of Printed Matter's founding board members, the art critic Lucy Lippard, once confided in me that when they opened, they thought artist's books would soon be found in every corner drugstore. "Boy, were we wrong," she added. Susan Herter of Herter Studios, during her tenure as editor at Chonicle Books in San Francisco, tried very hard to promote trade editions, or mass-produced approximations, of artist's books. Apart from the Griffin and Sabine series, which in fact did a lot to expand the general public's perception of the possibilities of book formats, Herter told me her efforts were unsuccessful.


上記にあげた様々な問題が、ジャンルについて解明しようと試みた結果であると同時に、多くの人がアーティスツ・ブックスという言葉を聞いたことが無いという理由を実証してもいる。アーティスツ・ブックスに関するコースがびっくりするほどいくつもできたり、ブック・アートに関する大学の学位まで世界中でできたり、図書館や美術館で展覧会がたくさん催されていることから判断すれば、アーティスツ・ブックスの知名度は確実に上がっている。しかし、歩みは遅く、アーティス・ブックスに貢献してきた多くの熱意溢れるギャラリスト、ディーラー、そしてスペースは、運営費をやりくりしながらアーティスツ・ブックスを売る、ということの難しさから、この25年間で、いくつも脱落した。公平を期するために言うと、これは一般的な現代美術関係の現場やインディペンデントなブックストアでも起きてきたことである。世界一有名なアーティスツ・ブックの現場であるニューヨークのPrinted Matterでさえ、慢性的に負債を抱え、作品が売れたアーティストに対しての支払いができないことすらあった。Printed Matterの創設者の一人である、美術評論家のLucy Lippardは、アーティスツ・ブックスはすぐにそこらじゅうのドラッグストアでも手に入るようなものになるんだと創設時には思っていたけれど、「いやあ、本当に私たちは間違っていたわ。」と最後に付け足し、そっと打ち明けてくれた。Herter StudiosのSusan HerterはサンフランシスコのChronicle Booksで編集者として在職中に、アーティスツ・ブックスの海外版や大量生産による擬似コピーをとても一生懸命に普及させようとしたが、一般の人たちの本のフォーマットの可能性に対する認識を広げるのに一役買ったGriffin and Sabine series以外の努力に関しては、Herterは私に失敗した、と告げた。



これは2002年に書かれた文章なので、今より4年前のこと、ということになる。
この4年間で、状況は少しは変わったのだろうか?
若輩者の私には、あまり変化は見られないので、誰かおしえてください。
寧ろ状況は悪化しているような気がするのが、気のせいならいいのだけれど。

けれど一方で。

何年も前から、もう、歴史は始まっている。
私たちがまだ同じところで燻っていたり、むしろ後戻りしていたとしても、
それすら歴史に組み込まれていると思えば、なんとなくいつかはどうにかなる気がしてくるから不思議だ。
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# by midori_sakai | 2006-04-21 01:24 | 全般的なこと

内田春菊/装丁:野田凪/『愛だからいいのよ』

前回スピンの話をしたので、一応その流れで。


内田春菊/装丁:野田凪/『愛だからいいのよ』
出版社: 講談社 ; ISBN: 4062114046 ; (2002/07)


講談社のサイト (矢印をクリック)

この本は、表紙全体が内田春菊の顔になっています。
髪の毛の色がホワイト・ブロンド・ブラック・ブラウン、と4種類違う色の表紙があるのですが、
その色にぴったり合わせたスピンがついているのです。
しかも12本も!
髪の毛ってことなんですね、スピンが。

DTPWORLD別冊 BOOK DESIGN vol.2 に、この本について載っていて、
それによると、12本のスピンをつけることは機械ではできず、スピンづけは手作業で行われたよう。

手作業!本当に恐れ入ります。
しかも金色のスピンは、色が見つからず特注で染め上げたそう。


嗚呼、この記事読んでたら感動したので、以下抜粋します。


DTPWORLD別冊 BOOK DESIGN vol.2 p027

また、店頭でスピンを本の中に挟みこむと、髪の毛の雰囲気がなくなってしまうという問題もあった。外側に出ていること、無造作に乱れていることが条件となる。そのため、一冊ずつスピンを整えながら、上にビニールのカバーをかけて梱包した。


泣けます。本当にすごいことです。これだけ手間暇かけてつくられた本は、本当に幸せ。
そして内田春菊、幸せ者ですね。ほんとに。どアップの顔の写真を表紙にした甲斐ありましたね。

ちなみにこの装丁は、第83回ニューヨークADC展の金賞にも選ばれています。これも最早数年前のことですけれど。


何も今更取り上げなくても、という声もあるかもしれませんが、
気にしません。好きなものは好きなのです!
髪の毛好き乙女ということも大いに影響しているかもしれませんが、
装丁に凝った本の中でも、この本はかなり好きです。
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# by midori_sakai | 2006-04-10 04:19 | 注目の本

望月マテリアル有限会社

定義ばかり追いかけてると、ちょっと息が詰まりそうなので。
それはゆっくり様々なソースを調べながら考えていきたいと思います。


で、その合間合間でアートや本に纏わる本屋/出版社/材料屋/展覧会/などなど
とにかくアートや本と関係があって、そして私がその都度紹介したいと思ったものや、調べてみたものなどを気負い無く紹介していこうと思います。


で、今日は、望月マテリアル有限会社。
と、名前を出してみても多分ほとんどの人は「?」となっていることでしょう。

これは、スピンの会社。正確に言うと、スピン以外にも花布(はなぎれ。ハードカバーの本の背のとこの上と下にちょっと布みたいなのがありませんか?それです。)なども扱っています。

スピンというのが何かということを一応説明しておくと、紐です。本のしおりになるものです。
コストダウンのために、今では文庫では新潮文庫にしかついていませんが、私は非常に不服に思っています。特に新潮社信者でもないのですが、文庫で同じタイトルが複数の出版社から出ている場合、私は迷うことなく新潮社から買います。理由はひとつ。スピンがついているから。あれほど便利でかつ美しく、品も歴史もあるものをコストダウンなんていうどうでもいい理由で辞めてしまう他の出版社文庫部のセンスを疑います。

嗚呼、つい熱くなってしまいましたが、この望月マテリアルには、以前私がスピンを使用した作品を製作したときにお世話になりました。神保町にあるその店で色とりどりの見本を見せられたときの興奮は忘れられません。あと衝撃的だったのは、スピンの値段。

150mで210円。


絶対に桁を一個間違えているはず!と思い、電話で何度も確認しました。


もうひとつ、この会社を訪れて思ったことは、ああ、この会社は本の紙の部分以外のものを取り扱う会社なのだな、ということ。あまり普段は本を、「紙」と「それ以外」という風に分けて考えることは無かったので、なんだか新鮮だったことを覚えています。一般的な王道の「本」というものをイメージするとき、つい「本は紙でできている」と考えてしまうのだけれど、スピンも花布も、紙ではない。分類的には布に近いものです。紙+布の本が流通に載っているのならば、紙+鉄もあり?とか。そんな簡単な話ではないとしても、「紙だけでできているわけではない」という風に少し考え方を改めることで、可能性が急に開けるような、イメージの転換を起こせるような気がしたのでした。



これはずっと言っていることなのですが、いつかスピンを大量に使用した作品をつくります。イメージはもうあるのです。それまで、せめて新潮文庫はスピンをつけ続けていてくれますように。
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# by midori_sakai | 2006-04-03 16:17 | material

アーティストブックに纏わるいくつかのクエスチョンを考える[4]

ちょっと日にちが空いてしまいましたが、続きの質問にも答えていきたいと思います。


11. 1冊しか印刷しない初版本(もちろん、その後、第2版からは何万部も印刷される。本は初版本の価値がスゴク高い)は、意図して印刷を指示していることによって、アーティスト・ブックになるの?

これは、実は一番悩んだ質問でした。これはその意図というものがアーテイスティックな哲学に基づくものならアーティストブックだけれど、商業的な理由によるものなら、それはタダの商業戦略でしか無いのではないか、と思う。まあ、ここでも同じ問題が浮上して、たとえ商業戦略であっても、見る側がそれをアートだ、と思ったらそれはアーティストブックなのか?という疑問が残る。

そのものがアートであるかどうかは、
作る人が決めること?見る人が決めること?



12. 音読の方法が指示されている本を読者がそれに従って読んだら、音読されるという行為によって、それはアーティスト・ブックになるの?

これは、なる。もっと言うと、「音読されるという行為によって」というよりは、「音読されるという行為も含めて」。


13. 京極夏彦のいくつかの本て、製本出来るぎりぎりの厚さに挑戦してるのよね。それは、ある意味、アーティスト・ブック?

製本好きなあたしは、これはアーティストブックと呼びたいですね。


14. 受験生が、あの赤ペンと緑の下敷きとで問いが出来るようにした参考書は、意図次第でアーティスト・ブックになる?

なります。


15. おいらもよくやったけど、ぱらぱらマンガが描かれた教科書はアーティスト・ブック?

なります。というか、もう既にそういうの作ってる作家も確かいたはず。


16. 誰かに読ませるために、抜粋してコピーして、まとめられた冊子はアーティスト・ブック?

なると思うな。


17. すべての日記はアーティスト・ブック?

私はそう感じます。


18. 契約は切れていて、保存したいメールだけが入った携帯電話は、アーティスト・ブック?

はい。というか、是非やってみたいです。
・・・って書いて、実際やったの思い出しました!!!
しかもとても大事にしていたのに、その小さな塊に残った思い出の重さに耐え切れず、ある日半狂乱で突発的に捨てました・・・。


19. 夜、我が子を寝かすためにママが何度も読んだ絵本。その読み方は、わが子がお気にりのところだけ。その子の為だけにある一定のものがたりを紡ぐために、印をつけた絵本はアーティスト・ブックなの?

これは判断の分かれるところだと思うけれど、私はやっぱりアーティストブックだと思います。


20. 新しい印刷方法、製本方法で作られた本は、それが一般化するまでは、アーティスト・ブック?

そうですね。そこに革新性があれば。


21. すべてのガリ版印刷はアーティスト・ブック?

これは違うと思うんですよね、珍しく。全てでは無い気がする。ちょっとイメージしきれて無いのですが。もちろんガリ版印刷のアーティストブックもいっぱいあると思います。ただ、すべてなのかと言われると、疑問だ、ということです。


22. 写経はアーティスト・ブックを作る行為?

はい。そうなんじゃないかな、と思っています。



ふう、ひと段落。
今後進めていくうちに、また戻って議論したくなる質問もあると思います。
しかしこれだけ答えて、最も痛切に、そして歯痒く思ったのは、

やはり「アーティストブック」という一言で括ると誤解が生じる、ということ。

いや、もう少し正確に言うと、
一番大きい括りの名称としては「アーティストブック」は有効だと思います。
けれども、その中に、いくつか分類があれば、説明しやすいなあ、と感じたことがたびたびありました。

「これは、○○系のアーティストブック」
「これは△△△型のアーティストブック」
「これは××でもあり、◎◎でもあるアーティストブック」


といったように。
でも、○○も△△△も××も◎◎も実はみんなアートで本だよね、ということを
リマインドするための「アーティストブック」という総称



まあ、もちろんその総称が「アーティストブック」でなくてはならない必然性はどこにも無く、何か他の用語を使ってもいいわけですが。それについてもこれからじっくり検討していきたいと思います。
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# by midori_sakai | 2006-03-31 13:13 | 全般的なこと

John Lennon /" My Anthology"

ついでにもう1つ。

ジョン・レノンのが12歳のときに製作した本が、4月19日にサザビーでオークションにかけられるらしい。


http://news.bbc.co.uk/1/hi/england/merseyside/4521884.stm (English/中身写真)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060327-04347045-jijp-int.view-001 (日本語/表紙写真)


内容は学習ノートに有名な詩や、それをテーマにしたドローイング(8点)が描かれているもの。
なんと学校の先生がずっと持っていたらしい。
落札推定価格は、ソースにより若干幅はあるが、2000万弱~3000万といったところのようである。
中にはクラス写真なども入っているそう。

アーティスティックな才能の片鱗が見られる、といった専門家の意見もあるようですが、
しかしこの当時は、担任の先生もまさかこんなことになるとは思ってなかったことでしょう。


学習ノートも、アーティストブックに。
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# by midori_sakai | 2006-03-27 06:17 | 注目の本

『モーニング娘。に教わるふつうカワイイ免許皆伝』

ちょっと質問群は置いておいて、閑話休題。

モーニング娘。/モーニング娘。に教わるふつうカワイイ免許皆伝(写真集)


どうですか、このセレクション。
知的アート界からもオシャレ本屋界からも総ブーイングを受けそうですが。


これを敢えて取り上げるのは、柔軟性を売りにしている私のささやかな意地を見せつけるためのようなものです。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4108990706/503-6529556-1214304

(以下、上記amazonのサイトからの引用)

出版社 / 著者からの内容紹介
モーニング娘。の、はじけるパワーとかわいさがギュッとつまった7メートルの巻物写真集が発売されました! 前代未聞! 業界初です!! 誰もみたことのない、なんじゃこりゃ~!?な写真集です。しかも、表と裏はまったく違う世界。ファンなら、絶対(!)見逃せない360度ショットが収録されてます

◆巻物収録写真枚数/約150枚(天地B5サイズ約7m、オールカラー、ダンボール箱収納)
◆いままでにない素顔の本音インタビュー収録。
◆各メンバーからみた、「この人ってこんな人です」のメッセージを収録。
◆モーニング娘。とともに「願かけ」ができる“特製リストバンド”のおまけが隠されています♪しかも、その中には、メンバー直筆のメッセージが書かれているリストバンドが入っている可能性もあり☆ 入っていたら、超~ラッキー♪


とのこと。


注目すべきは、この本が大御所出版社である新潮社から出版されており、ISBNが、「4108990706」ときちんとついている、ということだ。

つまり、これは条件的には完璧に本であるということがはっきりとわかる。
7mの巻物ですが。リストバンドまで入っていますが。


この中身の写真がアートなのかどうなのかはさておき、
この写真集を「7mの巻物式の本にしよう」と企画した人は、(本人が自覚的に意図していたかどうかもさておき、)確実に「本」という形態に挑戦し、新たな形式によって主張を試みている。それは、流通界を惑わす本のアートだと言えるかもしれない。どう捉えるべきかの正解はわからないが、少なくとも私はこんな物体にきちんとISBNがついて書店に並べられることにはやっぱりワクワクする。


人気に翳りが見えてきて、もう誰が誰だか顔と名前が一致しなくなってから久しいモーニング娘。だが、やはりそこは腐っても鯛。少女たちを育ててきた自負があり、今後も見捨てずに見守っていくであろうファンは相当数いるのであり、彼らは少女たちへの愛情を表明するために、嬉々として関連商品にお金を払うのだろう。そんな保障がある中で、普通の本を作るなんて、なんて勿体無いことだろう!

モーニング娘。だけではない。世の中には飛ぶように売れることが発売する前から決定されている商品というものが存在していて、どうせ売れるのならば、もうちょっと製作側が楽しんでもいいのではないだろうか。そして、もうちょっと売れ線商品と縁遠い人々も、楽しませてくれてもいいのではないだろうか。


メジャーの本流の中でほくそえむように。
そっち側にいる人たちには、是非ともこんな小さな悪戯や抵抗を今後も仕掛けていって戴きたいと思うのである。
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# by midori_sakai | 2006-03-27 03:21 | 注目の本

アーティストブックに纏わるいくつかのクエスチョンを考える[3]

引き続き、質問群に対する回答を続けていきます、よ。


4. アーティスト・ブックでは無い本で、中身に読者が書き加える(破ったり、シールを貼ったりでもいい)要素があって、読者によって書き加えられた世界に一冊しかないその本は、アーティスト・ブック化してしまうのかしら? そうなると、写真を入れたアルバムは、それだけでアーティスト・ブック?

まず、

アーティスト・ブックでは無い本で、中身に読者が書き加える(破ったり、シールを貼ったりでもいい)要素があって、読者によって書き加えられた世界に一冊しかないその本は、アーティスト・ブック化してしまうのかしら?

という質問ですが、これはその読者(加工を施した人)がアーティストブックだとそれを名づけたなら、それはアーティストブックということだし、アーティスティックな意図、もしくは様式でその加工を行ったのならアーティストブックだと言えるでしょう。周囲から見てアーティストブックであると言える場合も、あると思うし、それはそれでアーティストブックと言えると思う。


また、

そうなると、写真を入れたアルバムは、それだけでアーティスト・ブック?

とありますが、アートを意識して撮られた写真が収録されているもの、もしくはアーティスティックな形式でアルバムに収録されたものであれば、それはアーティストブックである。と言えるでしょう。


5. サイン会で、特別なメッセージが入れてもらった一冊しかないその本はアーティスト・ブックになる?

これも同じこと。この特別なメッセージがアーティスティックであれば。


6. 図書館の本に、そのページを読んでもらうためにわざと派手なしおりを挟んで置き直したら、その時点でそれはアーティスト・ブック化するの?

これは若干難しい点もあるが、やはりアーティストブック。


7. 何かを隠すためにくりぬかれた本(スパイ映画で銃を隠したりしてるアレ)を、見えるようにわざと飾ったら、オブジェ?アーティスト・ブック?

これは、オブジェとアーティストブックの単語としての定義を追究する必要がある。前述したように、今私はアーティストブックの可能性を広げようと考えているので、この場合はオブジェでもありアーティストブックでもあると言いたい。


8. 本のページにドッグ・イヤー(しおり代わりにページの端を折る行為)をたくさんつけて、つけたものを続けて読むとある種のメッセージになるようにしたら、アーティスト・ブック化する?

それがアートを意識している/させる限り。これはアーティストブックでしょう。


9. 有名な暗号で、同じ本をお互いに持って、そのページ数と行数、桁数を数列にして、その数列を使って、メッセージを送ることが出来るというのがあるが、この2冊の本と、数列、そのメッセージで、その2冊はアーティスト・ブックになるの?

それがアートを意識している/させる限り。これもアーティストブックでしょう。


10. 電話帳に印をつけて、その番号に電話をしたら、あるメッセージが流れるようにしたら、それはアーティスト・ブック?

これはアーティストブック。
その番号に電話する行為、流れてくるメッセージまで全てを含めてアーティストブックと言えると私は考える。




はい。そろそろお気づきでしょうか。

結局、これらの質問のほとんどで問題となるのは、

それがアートを意識している/させているかどうか

ということであり、逆にその場合これらは全てアーティストブックと言えるというのが私の基本姿勢である。

正確に言うと、

アーティストブックという言葉の定義は、これらを含めるほど広げていいのではないか、もしくは、ここまでカバーする単語――それはアーティストブックとはちょっと違う、何か別の単語を作り出す必要があるのかもしれないけれど――が本とアートの現場では必要とされているのではないか、ということを私は今考えている。本をアートすること。その可能性を広げること。今はまだ足跡のついていない道を開拓していくのもなかなか楽しいかもしれないと思っているというわけなのだ。
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# by midori_sakai | 2006-03-23 01:31 | 全般的なこと

アーティストブックに纏わるいくつかのクエスチョンを考える[2]

再び質問群より。


2. それとも、これは工芸品? ていうか、アーティスト・ブック以外は工芸品? アーティストブックと工芸品の違いは何?


よくある手で恐縮ですが、とりあえず「工芸品」を広辞苑で調べてみることに。


芸術的要素を含む工作物。美術意匠と技巧とによって美感を与えると同時に日常生活に役立つ物品を指している。 『広辞苑 第五版』(岩波書店) 



とのこと。

なるほど。


「日常生活に役立つ物品」かどうかが鍵だな。


つまり、
「日常生活に役立つアーティストブック」は、アーティストブックであり、工芸品でもあるけど、
「日常生活に役立たないアーティストブック」は、工芸品ではない、ということになる。

それだけのことではないでしょうか。

指し示すものの範囲としては、アーティストブックの語義が限定されていなく、可能性を持っているため(というか、その可能性を探求するためにつらつらと毎日書いているわけだけど)

アーティストブック>工芸品

という図式が成り立つのではないでしょうか。


ついでにもう1個。


3. ブックとアーティスト・ブックの違いは何?

これは難題。
けどまあ説明をとりあえずつけてみようと思う。


製作者がアートであるものを本にしたり、本をアートしたりしたもの全てをアーティストブックと呼ぶとする。

そうすると、それ以外のものは全部ただのブックなのではないでしょうか。



・・・と書いてはみたものの。

では、製作者はアートを意図してないとしても、受け手が、「これはアートだ!」と思った場合はどうなるのだろう。


私としては、これもアーティストブックの範疇に入れたいところ。
そうなると、ただの「ブック」というのは、以下のように定義できる。


「製作者がアートであるものを本にしたり、本自体をアート作品と意図して製作したものや、また、読者もそのものを見て、何らアートの要素を感じない場合」



だと思うのですが、どうでしょう。

でも、うーん、この件については、やっぱりちょっと保留かな。

言葉の定義は、帰納法的に考えていこうとするのが基本的にこのブログの根っこにあるもので、定義が先にあるものでないから。今すぐに答えは出ない方がいい気がするし、上記のように言い切ってみたものの、どうもこういうのは、私はうさんくさく感じてしまうのだ。少なくとも今は。
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# by midori_sakai | 2006-03-21 00:23 | 全般的なこと

アーティストブックに纏わるいくつかのクエスチョンを考える[1]

たまに息抜きに違うトピックも取り上げるつもりでいますが。
しばらくは、この質問群について、少しずつ考えていこうと思う。



1. アーティストが、データとして作って、HPなどで発表したものを、読者がダウンロードし、読者それぞれが本に製本した場合(誰にとっても、同じ物が出来るよう指示した場合と、作る人によって変わる様に意図した作品の最低二種はある)、それで出来た本はアーティスト・ブック?


と質問はあるのだけれど、2種類の状況が想定されているので、それぞれ別個に考えたいと思う。


1a. データを作ったアーティストが、誰にとっても、同じ本が出来るよう指示した場合


1b. データを作ったアーティストが、作る人によってそれぞれに変わった本が出来るよう意図した場合


あともう一個思いついたので、おまけ。


1c. データを作ったアーティストとは関係なく、他の人がそのデータを利用して本を作った場合



ではまず。

1a. データを作ったアーティストが、誰にとっても、同じ物が出来るよう指示した場合

これは、アーティストブックだと思う。
(何度も言いたいので言いますが、この単語の定義はさておき、とりあえず総称として。)

だってデータをアーティストが作っていて、指示もアーティストが出しているわけなので。これはアーティストに著作権がある、インストラクションピースでもあるアーティストブック、と言えるのではないだろうか。


1b. データを作ったアーティストが、作る人によってそれぞれに変わった本が出来るよう意図した場合

これもアーティストブック。
データをアーティストが作っていて、作る人によってそれぞれに変わった本が出来るように意図しているのは、やはりアーティストなので、これも実は1aとはあまり違いはない。「指示」と「意図」の差はその言葉の持つ強さや強制力の度合いであり、意図され、それに人々が従ってそれぞれの本を作るのであればそれはもう「指示」である。従って、上記と同じように、こちらもアーティストに著作権がある、インストラクションピースでもあるアーティストブック、と言える。


1c. データを作ったアーティストとは関係なく、他の人がそのデータを利用して本を作った場合

これは一見、その「他の人」が製作した本がどのようなものか、というものにも関わってくるように思えてくる。その本が平凡な本なのか、それともアーティスティックな本なのか、ということ。しかしながら、よく考えてみると、そのアーティストが製作したデータが「アート」である限り、その本は、Books as Art (アートとしての本)では無いかもしれないが、今現在一般に言われている「アーティストブック」という範疇には入るはずだ。その「他の人」が、「本」を製作する気があり(どういう本だとしても)その内容が「アート」ならば、それはアーティストブックである。

さて、この場合著作権がどうなるのかというのは実は私はよくわからない。詳しい方がいたら、是非教えて下さい。
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# by midori_sakai | 2006-03-20 01:05 | 全般的なこと

アーティストブックに纏わるいくつかのクエスチョン。

ブログ、ちまちまと更新してますよ、ということをmixiの日記に書いたら、もう長い付き合いになる映画監督・菱沼康介氏からコメントがついていて、それがあまりにも面白かったので、こちらに転載することにした。

以下がその内容である。(一部加筆修正)


-----------------------------------------

質問。


1. アーティストが、データとして作って、HPなどで発表したものを、読者がダウンロードし、読者それぞれが本に製本した場合(誰にとっても、同じ物が出来るよう指示した場合と、作る人によって変わる様に意図した作品の最低二種はある)、それで出来た本はアーティスト・ブック?


2. それとも、これは工芸品? ていうか、アーティスト・ブック以外は工芸品? アーティスト・ブックと工芸品の違いは何?

3. ブックとアーティスト・ブックの違いは何?

4. アーティスト・ブックでは無い本で、中身に読者が書き加える(破ったり、シールを貼ったりでもいい)要素があって、読者によって書き加えられた世界に一冊しかないその本は、アーティスト・ブック化してしまうのかしら? そうなると、写真を入れたアルバムは、それだけでアーティスト・ブック?

5. サイン会で、特別なメッセージを入れてもらった一冊しかないその本はアーティスト・ブックになる?

6. 図書館の本に、そのページを読んでもらうためにわざと派手なしおりを挟んで置き直したら、その時点でそれはアーティスト・ブック化するの?

7. 何かを隠すためにくりぬかれた本(スパイ映画で銃を隠したりしてるアレ)を、見えるようにわざと飾ったら、オブジェ?アーティスト・ブック?

8. 本のページにドッグ・イヤー(しおり代わりにページの端を折る行為)をたくさんつけて、つけたものを続けて読むとある種のメッセージになるようにしたら、アーティスト・ブック化する?

9. 有名な暗号で、同じ本をお互いに持って、そのページ数と行数、桁数を数列にして、その数列を使って、メッセージを送ることが出来るというのがあるが、この2冊の本と、数列、そのメッセージで、その2冊はアーティスト・ブックになるの?

10. 電話帳に印をつけて、その番号に電話をしたら、あるメッセージが流れるようにしたら、それはアーティスト・ブック?

11. 1冊しか印刷しない初版本(もちろん、その後、第2版からは何万部も印刷される。本は初版本の価値がスゴク高い)は、意図して印刷を指示していることによって、アーティスト・ブックになるの?

12. 音読の方法が指示されている本を読者がそれに従って読んだら、音読されるという行為によって、それはアーティスト・ブックになるの?

13. 京極夏彦のいくつかの本て、製本出来るぎりぎりの厚さに挑戦してるのよね。それは、ある意味、アーティスト・ブック?

14. 受験生が、あの赤ペンと緑の下敷きとで問いが出来るようにした参考書は、意図次第でアーティスト・ブックになる?

15. おいらもよくやったけど、ぱらぱらマンガが描かれた教科書はアーティスト・ブック?

16. 誰かに読ませるために、抜粋してコピーして、まとめられた冊子はアーティスト・ブック?

17. すべての日記はアーティスト・ブック?

18. 契約は切れていて、保存したいメールだけが入った携帯電話は、アーティスト・ブック?

19. 夜、我が子を寝かすためにママが何度も読み聞かせた絵本。その読み方は、我が子がお気にりのところだけ。その子用にある一定のものがたりを紡ぐために、印をつけた絵本はアーティスト・ブックなの?

20. 新しい印刷方法、製本方法で作られた本は、それが一般化するまでは、アーティスト・ブック?

21. すべてのガリ版印刷はアーティスト・ブック?

22. 写経はアーティスト・ブックを作る行為?



というわけで、相当いっぱい質問がきました。
しかも全部面白い。どうしよう。

で、これからちょっとずつあたしが思ったことを書いていこうと思いますが、その前にできれば皆様の意見もバシバシ欲しいところです。臆せずコメントください。全部答えられなければ、自分が気になったものだけでもいい。是非是非ご意見お寄せください。
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# by midori_sakai | 2006-03-16 22:31 | 全般的なこと