<   2006年 03月 ( 16 )   > この月の画像一覧

アーティストブックに纏わるいくつかのクエスチョンを考える[4]

ちょっと日にちが空いてしまいましたが、続きの質問にも答えていきたいと思います。


11. 1冊しか印刷しない初版本(もちろん、その後、第2版からは何万部も印刷される。本は初版本の価値がスゴク高い)は、意図して印刷を指示していることによって、アーティスト・ブックになるの?

これは、実は一番悩んだ質問でした。これはその意図というものがアーテイスティックな哲学に基づくものならアーティストブックだけれど、商業的な理由によるものなら、それはタダの商業戦略でしか無いのではないか、と思う。まあ、ここでも同じ問題が浮上して、たとえ商業戦略であっても、見る側がそれをアートだ、と思ったらそれはアーティストブックなのか?という疑問が残る。

そのものがアートであるかどうかは、
作る人が決めること?見る人が決めること?



12. 音読の方法が指示されている本を読者がそれに従って読んだら、音読されるという行為によって、それはアーティスト・ブックになるの?

これは、なる。もっと言うと、「音読されるという行為によって」というよりは、「音読されるという行為も含めて」。


13. 京極夏彦のいくつかの本て、製本出来るぎりぎりの厚さに挑戦してるのよね。それは、ある意味、アーティスト・ブック?

製本好きなあたしは、これはアーティストブックと呼びたいですね。


14. 受験生が、あの赤ペンと緑の下敷きとで問いが出来るようにした参考書は、意図次第でアーティスト・ブックになる?

なります。


15. おいらもよくやったけど、ぱらぱらマンガが描かれた教科書はアーティスト・ブック?

なります。というか、もう既にそういうの作ってる作家も確かいたはず。


16. 誰かに読ませるために、抜粋してコピーして、まとめられた冊子はアーティスト・ブック?

なると思うな。


17. すべての日記はアーティスト・ブック?

私はそう感じます。


18. 契約は切れていて、保存したいメールだけが入った携帯電話は、アーティスト・ブック?

はい。というか、是非やってみたいです。
・・・って書いて、実際やったの思い出しました!!!
しかもとても大事にしていたのに、その小さな塊に残った思い出の重さに耐え切れず、ある日半狂乱で突発的に捨てました・・・。


19. 夜、我が子を寝かすためにママが何度も読んだ絵本。その読み方は、わが子がお気にりのところだけ。その子の為だけにある一定のものがたりを紡ぐために、印をつけた絵本はアーティスト・ブックなの?

これは判断の分かれるところだと思うけれど、私はやっぱりアーティストブックだと思います。


20. 新しい印刷方法、製本方法で作られた本は、それが一般化するまでは、アーティスト・ブック?

そうですね。そこに革新性があれば。


21. すべてのガリ版印刷はアーティスト・ブック?

これは違うと思うんですよね、珍しく。全てでは無い気がする。ちょっとイメージしきれて無いのですが。もちろんガリ版印刷のアーティストブックもいっぱいあると思います。ただ、すべてなのかと言われると、疑問だ、ということです。


22. 写経はアーティスト・ブックを作る行為?

はい。そうなんじゃないかな、と思っています。



ふう、ひと段落。
今後進めていくうちに、また戻って議論したくなる質問もあると思います。
しかしこれだけ答えて、最も痛切に、そして歯痒く思ったのは、

やはり「アーティストブック」という一言で括ると誤解が生じる、ということ。

いや、もう少し正確に言うと、
一番大きい括りの名称としては「アーティストブック」は有効だと思います。
けれども、その中に、いくつか分類があれば、説明しやすいなあ、と感じたことがたびたびありました。

「これは、○○系のアーティストブック」
「これは△△△型のアーティストブック」
「これは××でもあり、◎◎でもあるアーティストブック」


といったように。
でも、○○も△△△も××も◎◎も実はみんなアートで本だよね、ということを
リマインドするための「アーティストブック」という総称



まあ、もちろんその総称が「アーティストブック」でなくてはならない必然性はどこにも無く、何か他の用語を使ってもいいわけですが。それについてもこれからじっくり検討していきたいと思います。
[PR]
by midori_sakai | 2006-03-31 13:13 | 全般的なこと

John Lennon /" My Anthology"

ついでにもう1つ。

ジョン・レノンのが12歳のときに製作した本が、4月19日にサザビーでオークションにかけられるらしい。


http://news.bbc.co.uk/1/hi/england/merseyside/4521884.stm (English/中身写真)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060327-04347045-jijp-int.view-001 (日本語/表紙写真)


内容は学習ノートに有名な詩や、それをテーマにしたドローイング(8点)が描かれているもの。
なんと学校の先生がずっと持っていたらしい。
落札推定価格は、ソースにより若干幅はあるが、2000万弱~3000万といったところのようである。
中にはクラス写真なども入っているそう。

アーティスティックな才能の片鱗が見られる、といった専門家の意見もあるようですが、
しかしこの当時は、担任の先生もまさかこんなことになるとは思ってなかったことでしょう。


学習ノートも、アーティストブックに。
[PR]
by midori_sakai | 2006-03-27 06:17 | 注目の本

『モーニング娘。に教わるふつうカワイイ免許皆伝』

ちょっと質問群は置いておいて、閑話休題。

モーニング娘。/モーニング娘。に教わるふつうカワイイ免許皆伝(写真集)


どうですか、このセレクション。
知的アート界からもオシャレ本屋界からも総ブーイングを受けそうですが。


これを敢えて取り上げるのは、柔軟性を売りにしている私のささやかな意地を見せつけるためのようなものです。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4108990706/503-6529556-1214304

(以下、上記amazonのサイトからの引用)

出版社 / 著者からの内容紹介
モーニング娘。の、はじけるパワーとかわいさがギュッとつまった7メートルの巻物写真集が発売されました! 前代未聞! 業界初です!! 誰もみたことのない、なんじゃこりゃ~!?な写真集です。しかも、表と裏はまったく違う世界。ファンなら、絶対(!)見逃せない360度ショットが収録されてます

◆巻物収録写真枚数/約150枚(天地B5サイズ約7m、オールカラー、ダンボール箱収納)
◆いままでにない素顔の本音インタビュー収録。
◆各メンバーからみた、「この人ってこんな人です」のメッセージを収録。
◆モーニング娘。とともに「願かけ」ができる“特製リストバンド”のおまけが隠されています♪しかも、その中には、メンバー直筆のメッセージが書かれているリストバンドが入っている可能性もあり☆ 入っていたら、超~ラッキー♪


とのこと。


注目すべきは、この本が大御所出版社である新潮社から出版されており、ISBNが、「4108990706」ときちんとついている、ということだ。

つまり、これは条件的には完璧に本であるということがはっきりとわかる。
7mの巻物ですが。リストバンドまで入っていますが。


この中身の写真がアートなのかどうなのかはさておき、
この写真集を「7mの巻物式の本にしよう」と企画した人は、(本人が自覚的に意図していたかどうかもさておき、)確実に「本」という形態に挑戦し、新たな形式によって主張を試みている。それは、流通界を惑わす本のアートだと言えるかもしれない。どう捉えるべきかの正解はわからないが、少なくとも私はこんな物体にきちんとISBNがついて書店に並べられることにはやっぱりワクワクする。


人気に翳りが見えてきて、もう誰が誰だか顔と名前が一致しなくなってから久しいモーニング娘。だが、やはりそこは腐っても鯛。少女たちを育ててきた自負があり、今後も見捨てずに見守っていくであろうファンは相当数いるのであり、彼らは少女たちへの愛情を表明するために、嬉々として関連商品にお金を払うのだろう。そんな保障がある中で、普通の本を作るなんて、なんて勿体無いことだろう!

モーニング娘。だけではない。世の中には飛ぶように売れることが発売する前から決定されている商品というものが存在していて、どうせ売れるのならば、もうちょっと製作側が楽しんでもいいのではないだろうか。そして、もうちょっと売れ線商品と縁遠い人々も、楽しませてくれてもいいのではないだろうか。


メジャーの本流の中でほくそえむように。
そっち側にいる人たちには、是非ともこんな小さな悪戯や抵抗を今後も仕掛けていって戴きたいと思うのである。
[PR]
by midori_sakai | 2006-03-27 03:21 | 注目の本

アーティストブックに纏わるいくつかのクエスチョンを考える[3]

引き続き、質問群に対する回答を続けていきます、よ。


4. アーティスト・ブックでは無い本で、中身に読者が書き加える(破ったり、シールを貼ったりでもいい)要素があって、読者によって書き加えられた世界に一冊しかないその本は、アーティスト・ブック化してしまうのかしら? そうなると、写真を入れたアルバムは、それだけでアーティスト・ブック?

まず、

アーティスト・ブックでは無い本で、中身に読者が書き加える(破ったり、シールを貼ったりでもいい)要素があって、読者によって書き加えられた世界に一冊しかないその本は、アーティスト・ブック化してしまうのかしら?

という質問ですが、これはその読者(加工を施した人)がアーティストブックだとそれを名づけたなら、それはアーティストブックということだし、アーティスティックな意図、もしくは様式でその加工を行ったのならアーティストブックだと言えるでしょう。周囲から見てアーティストブックであると言える場合も、あると思うし、それはそれでアーティストブックと言えると思う。


また、

そうなると、写真を入れたアルバムは、それだけでアーティスト・ブック?

とありますが、アートを意識して撮られた写真が収録されているもの、もしくはアーティスティックな形式でアルバムに収録されたものであれば、それはアーティストブックである。と言えるでしょう。


5. サイン会で、特別なメッセージが入れてもらった一冊しかないその本はアーティスト・ブックになる?

これも同じこと。この特別なメッセージがアーティスティックであれば。


6. 図書館の本に、そのページを読んでもらうためにわざと派手なしおりを挟んで置き直したら、その時点でそれはアーティスト・ブック化するの?

これは若干難しい点もあるが、やはりアーティストブック。


7. 何かを隠すためにくりぬかれた本(スパイ映画で銃を隠したりしてるアレ)を、見えるようにわざと飾ったら、オブジェ?アーティスト・ブック?

これは、オブジェとアーティストブックの単語としての定義を追究する必要がある。前述したように、今私はアーティストブックの可能性を広げようと考えているので、この場合はオブジェでもありアーティストブックでもあると言いたい。


8. 本のページにドッグ・イヤー(しおり代わりにページの端を折る行為)をたくさんつけて、つけたものを続けて読むとある種のメッセージになるようにしたら、アーティスト・ブック化する?

それがアートを意識している/させる限り。これはアーティストブックでしょう。


9. 有名な暗号で、同じ本をお互いに持って、そのページ数と行数、桁数を数列にして、その数列を使って、メッセージを送ることが出来るというのがあるが、この2冊の本と、数列、そのメッセージで、その2冊はアーティスト・ブックになるの?

それがアートを意識している/させる限り。これもアーティストブックでしょう。


10. 電話帳に印をつけて、その番号に電話をしたら、あるメッセージが流れるようにしたら、それはアーティスト・ブック?

これはアーティストブック。
その番号に電話する行為、流れてくるメッセージまで全てを含めてアーティストブックと言えると私は考える。




はい。そろそろお気づきでしょうか。

結局、これらの質問のほとんどで問題となるのは、

それがアートを意識している/させているかどうか

ということであり、逆にその場合これらは全てアーティストブックと言えるというのが私の基本姿勢である。

正確に言うと、

アーティストブックという言葉の定義は、これらを含めるほど広げていいのではないか、もしくは、ここまでカバーする単語――それはアーティストブックとはちょっと違う、何か別の単語を作り出す必要があるのかもしれないけれど――が本とアートの現場では必要とされているのではないか、ということを私は今考えている。本をアートすること。その可能性を広げること。今はまだ足跡のついていない道を開拓していくのもなかなか楽しいかもしれないと思っているというわけなのだ。
[PR]
by midori_sakai | 2006-03-23 01:31 | 全般的なこと

アーティストブックに纏わるいくつかのクエスチョンを考える[2]

再び質問群より。


2. それとも、これは工芸品? ていうか、アーティスト・ブック以外は工芸品? アーティストブックと工芸品の違いは何?


よくある手で恐縮ですが、とりあえず「工芸品」を広辞苑で調べてみることに。


芸術的要素を含む工作物。美術意匠と技巧とによって美感を与えると同時に日常生活に役立つ物品を指している。 『広辞苑 第五版』(岩波書店) 



とのこと。

なるほど。


「日常生活に役立つ物品」かどうかが鍵だな。


つまり、
「日常生活に役立つアーティストブック」は、アーティストブックであり、工芸品でもあるけど、
「日常生活に役立たないアーティストブック」は、工芸品ではない、ということになる。

それだけのことではないでしょうか。

指し示すものの範囲としては、アーティストブックの語義が限定されていなく、可能性を持っているため(というか、その可能性を探求するためにつらつらと毎日書いているわけだけど)

アーティストブック>工芸品

という図式が成り立つのではないでしょうか。


ついでにもう1個。


3. ブックとアーティスト・ブックの違いは何?

これは難題。
けどまあ説明をとりあえずつけてみようと思う。


製作者がアートであるものを本にしたり、本をアートしたりしたもの全てをアーティストブックと呼ぶとする。

そうすると、それ以外のものは全部ただのブックなのではないでしょうか。



・・・と書いてはみたものの。

では、製作者はアートを意図してないとしても、受け手が、「これはアートだ!」と思った場合はどうなるのだろう。


私としては、これもアーティストブックの範疇に入れたいところ。
そうなると、ただの「ブック」というのは、以下のように定義できる。


「製作者がアートであるものを本にしたり、本自体をアート作品と意図して製作したものや、また、読者もそのものを見て、何らアートの要素を感じない場合」



だと思うのですが、どうでしょう。

でも、うーん、この件については、やっぱりちょっと保留かな。

言葉の定義は、帰納法的に考えていこうとするのが基本的にこのブログの根っこにあるもので、定義が先にあるものでないから。今すぐに答えは出ない方がいい気がするし、上記のように言い切ってみたものの、どうもこういうのは、私はうさんくさく感じてしまうのだ。少なくとも今は。
[PR]
by midori_sakai | 2006-03-21 00:23 | 全般的なこと

アーティストブックに纏わるいくつかのクエスチョンを考える[1]

たまに息抜きに違うトピックも取り上げるつもりでいますが。
しばらくは、この質問群について、少しずつ考えていこうと思う。



1. アーティストが、データとして作って、HPなどで発表したものを、読者がダウンロードし、読者それぞれが本に製本した場合(誰にとっても、同じ物が出来るよう指示した場合と、作る人によって変わる様に意図した作品の最低二種はある)、それで出来た本はアーティスト・ブック?


と質問はあるのだけれど、2種類の状況が想定されているので、それぞれ別個に考えたいと思う。


1a. データを作ったアーティストが、誰にとっても、同じ本が出来るよう指示した場合


1b. データを作ったアーティストが、作る人によってそれぞれに変わった本が出来るよう意図した場合


あともう一個思いついたので、おまけ。


1c. データを作ったアーティストとは関係なく、他の人がそのデータを利用して本を作った場合



ではまず。

1a. データを作ったアーティストが、誰にとっても、同じ物が出来るよう指示した場合

これは、アーティストブックだと思う。
(何度も言いたいので言いますが、この単語の定義はさておき、とりあえず総称として。)

だってデータをアーティストが作っていて、指示もアーティストが出しているわけなので。これはアーティストに著作権がある、インストラクションピースでもあるアーティストブック、と言えるのではないだろうか。


1b. データを作ったアーティストが、作る人によってそれぞれに変わった本が出来るよう意図した場合

これもアーティストブック。
データをアーティストが作っていて、作る人によってそれぞれに変わった本が出来るように意図しているのは、やはりアーティストなので、これも実は1aとはあまり違いはない。「指示」と「意図」の差はその言葉の持つ強さや強制力の度合いであり、意図され、それに人々が従ってそれぞれの本を作るのであればそれはもう「指示」である。従って、上記と同じように、こちらもアーティストに著作権がある、インストラクションピースでもあるアーティストブック、と言える。


1c. データを作ったアーティストとは関係なく、他の人がそのデータを利用して本を作った場合

これは一見、その「他の人」が製作した本がどのようなものか、というものにも関わってくるように思えてくる。その本が平凡な本なのか、それともアーティスティックな本なのか、ということ。しかしながら、よく考えてみると、そのアーティストが製作したデータが「アート」である限り、その本は、Books as Art (アートとしての本)では無いかもしれないが、今現在一般に言われている「アーティストブック」という範疇には入るはずだ。その「他の人」が、「本」を製作する気があり(どういう本だとしても)その内容が「アート」ならば、それはアーティストブックである。

さて、この場合著作権がどうなるのかというのは実は私はよくわからない。詳しい方がいたら、是非教えて下さい。
[PR]
by midori_sakai | 2006-03-20 01:05 | 全般的なこと

アーティストブックに纏わるいくつかのクエスチョン。

ブログ、ちまちまと更新してますよ、ということをmixiの日記に書いたら、もう長い付き合いになる映画監督・菱沼康介氏からコメントがついていて、それがあまりにも面白かったので、こちらに転載することにした。

以下がその内容である。(一部加筆修正)


-----------------------------------------

質問。


1. アーティストが、データとして作って、HPなどで発表したものを、読者がダウンロードし、読者それぞれが本に製本した場合(誰にとっても、同じ物が出来るよう指示した場合と、作る人によって変わる様に意図した作品の最低二種はある)、それで出来た本はアーティスト・ブック?


2. それとも、これは工芸品? ていうか、アーティスト・ブック以外は工芸品? アーティスト・ブックと工芸品の違いは何?

3. ブックとアーティスト・ブックの違いは何?

4. アーティスト・ブックでは無い本で、中身に読者が書き加える(破ったり、シールを貼ったりでもいい)要素があって、読者によって書き加えられた世界に一冊しかないその本は、アーティスト・ブック化してしまうのかしら? そうなると、写真を入れたアルバムは、それだけでアーティスト・ブック?

5. サイン会で、特別なメッセージを入れてもらった一冊しかないその本はアーティスト・ブックになる?

6. 図書館の本に、そのページを読んでもらうためにわざと派手なしおりを挟んで置き直したら、その時点でそれはアーティスト・ブック化するの?

7. 何かを隠すためにくりぬかれた本(スパイ映画で銃を隠したりしてるアレ)を、見えるようにわざと飾ったら、オブジェ?アーティスト・ブック?

8. 本のページにドッグ・イヤー(しおり代わりにページの端を折る行為)をたくさんつけて、つけたものを続けて読むとある種のメッセージになるようにしたら、アーティスト・ブック化する?

9. 有名な暗号で、同じ本をお互いに持って、そのページ数と行数、桁数を数列にして、その数列を使って、メッセージを送ることが出来るというのがあるが、この2冊の本と、数列、そのメッセージで、その2冊はアーティスト・ブックになるの?

10. 電話帳に印をつけて、その番号に電話をしたら、あるメッセージが流れるようにしたら、それはアーティスト・ブック?

11. 1冊しか印刷しない初版本(もちろん、その後、第2版からは何万部も印刷される。本は初版本の価値がスゴク高い)は、意図して印刷を指示していることによって、アーティスト・ブックになるの?

12. 音読の方法が指示されている本を読者がそれに従って読んだら、音読されるという行為によって、それはアーティスト・ブックになるの?

13. 京極夏彦のいくつかの本て、製本出来るぎりぎりの厚さに挑戦してるのよね。それは、ある意味、アーティスト・ブック?

14. 受験生が、あの赤ペンと緑の下敷きとで問いが出来るようにした参考書は、意図次第でアーティスト・ブックになる?

15. おいらもよくやったけど、ぱらぱらマンガが描かれた教科書はアーティスト・ブック?

16. 誰かに読ませるために、抜粋してコピーして、まとめられた冊子はアーティスト・ブック?

17. すべての日記はアーティスト・ブック?

18. 契約は切れていて、保存したいメールだけが入った携帯電話は、アーティスト・ブック?

19. 夜、我が子を寝かすためにママが何度も読み聞かせた絵本。その読み方は、我が子がお気にりのところだけ。その子用にある一定のものがたりを紡ぐために、印をつけた絵本はアーティスト・ブックなの?

20. 新しい印刷方法、製本方法で作られた本は、それが一般化するまでは、アーティスト・ブック?

21. すべてのガリ版印刷はアーティスト・ブック?

22. 写経はアーティスト・ブックを作る行為?



というわけで、相当いっぱい質問がきました。
しかも全部面白い。どうしよう。

で、これからちょっとずつあたしが思ったことを書いていこうと思いますが、その前にできれば皆様の意見もバシバシ欲しいところです。臆せずコメントください。全部答えられなければ、自分が気になったものだけでもいい。是非是非ご意見お寄せください。
[PR]
by midori_sakai | 2006-03-16 22:31 | 全般的なこと

Books as Art <1991> [6]

さて、今日のテーマ。


「アーティストブックにおいて、オリジナルって何?」


以下、またシンポジウムの模様から引用。

"Books as ART" Boca Raton Museum of Art
Addendum p.Ⅶ-

Marvin Sackner: ...In our own collection, as we define an artist's book, we have a classification system too, and we usually define an artist's book as something that is limited in edition size. In otherwords, to me, it is not a run of 3000, 5000, 50,000 books even though an artist may have made that book. An artist's book, for me, is an edition of 1, an edition of 3, an edition of 5 and not much more than that. So that I view it, and I'm in agreement with the other people who've said it, it's a private kind of thing where the artist can communicate in a private way with the observer.

Marvin Sackner: ・・・私たちのコレクションでは、アーティストブックは、その部数によって定義されます。言い替えると、私にとっては、3000、5000、50,000部の本は、たとえアーティスト自身の手で作られたものだったとしてもアーティストブックでは無い、ということです。アーティストブックは、私にとっては、1部だけのものや、3部、5部のもので、それ以上のものではありません。なので、この視点から見ると、他の人も仰ってましたが、アーティストブックとはとてもプライベートなもので、アーティストがそれを観るものに対して、とてもプライベートな方法でコミュニケーションを取ることができるものだという意見に賛成です。




まずシンポジウム内でこういう発言がある。
数ページにおよぶシンポジウムの記事を読んだが、私が一番ひっかかったのはやはりこの発言だった。でもきっとみんなそうなんだね。質疑応答で観客から真っ先に質問されたのは、やはり「部数でアーティストブックを定義するのか?」ということだった。(何故か回答はMarvin Sacknerではなく、Charles H. Hine Ⅲがしていて、なんとなく納得いかないのだが。)

というわけで、以下質疑応答の模様。



Audience: ...It was mentioned that some of the books are in limited editions of 1,3,6 and so forth. When I first saw this exhibition announced, BOOKS AS ART, somehow it conjured up in my mind the type of books my wife and I collect which are livre d'artiste or beau livre. We usually think of those as perhaps Matisse's JAZZ, or Leger's Le Cirwur, Picasso's Carmen, or whatever. They are not limited to that small a number but are in editions of 100 and up to 250. Was this prticular exhibit aimed at that type of book or exactly what?

Charles H. Hine Ⅲ: This is a question I want to respond to because I think it is, for me, a really interesting question. We make precisely this genre and I find that people are more hasty to define what we do as different from other things than I am. Everything is a limited edition. Chrysler builds cars and advertises them as a limited edition. Really the difference in a world population of 5 billion between a book that is 7 copies and the book that is 7000 is minscule. One thousandth of the population will ever come in contact with it in any case. What are you left with? You are left with defining the qualities of the book. Whether it was done in an edition of 7 or 700 is not that critical.

Audience: You do limit yours though?

Charles H. Hine Ⅲ: Yes. The approriateness of limiting them has to do with the scarcity of materials and the technical processes. Books started fluorescing in their editions because offset lithography could produce the same quality impression at the 10 thousandth impression as it did at the first. Whereas the hand lithograph, livre d'artiste of the late 19th Century stopped at 250, plus squeezing out those 30 extra hors commerces, which was simply because that was what the stone could produce with fidelity.

Audience: But they are considered originals?

Charles H. Hine Ⅲ: Oh yes.

Audience: Each JAZZ is considered an original though there mayhabe been 250 of them?

Charles H. Hine Ⅲ: Absolutely.

Audience: Whereas in a larger edition they wouldn't be? Or offset lithography or some other form of producing large editions wouldn't also be?


Charles H. Hine Ⅲ: I'm inviting you to think of each thing as original, considering that all editions are limited, and just to look at the quality of production.



客:・・・1部、3部、6部など、部数が限られているものがそう(アーティストブック)だと言うことが先ほど言われていました。私が最初にBOOKS AS ARTという展覧会が行われるというのを知った時、なんとなく私と妻が集めているような、リーブル・ダルティストやボー・リーブルの展覧会だと理解していました。通常思い浮かべるのは、例えばマティスのJAZZや、レジェのLe Cirwurや、ピカソのCarmenみたいなものですね。こういったものは、小部数に限られていませんが、100部から250部程度しか作られていないものです。この展覧会は、こういったタイプの本に照準を合わせようとしたものだったのですか?そうでなければ、どういうものを狙ったたものだったのですか?

Charles H. Hine Ⅲ:これは私にとってとても興味深い質問なので、私がお答えしたいと思います。私たちは正にこういったジャンルのものを作っており、私たちのつくるものが他のものに比べてどう違うかの定義を、人々は私よりも性急に行おうとしているように感じます。全てのものは限定数で作られていると言えます。クライスラーは車を製造し、それらを限定数と言って宣伝します。実際、世界には50億もの人がいるのだから、7部の本と7000部の本の違いなど本当に非常に小さななものです。どんなことがあっても、全人口の1000分の1の人だって、その本と接することはないのです。じゃあどうすればいいのか?そうなったら、本の質で定義づけを行うしかありません。それが7部が700部かということは、それほど重要なことではないのです。

客:しかし、あなたは自分のコレクションには制限を設けるのですよね?

Charles H. Hine Ⅲ:そうですね。制限を設けることの妥当性は、物の希少性とテクニカル・プロセスの問題と関係しています。オフセット印刷が全く同じ結果を1回目と10,000回目とに出せることから、本はまとまとまった部数で作れるようになりました。一方で、手製のリトグラフの場合、19世紀末のリーブル・ダルティストは250部と、あとなんとか非売品分として余分に30部製作し、それ以上はつくりませんでした。これは単純に、これが忠実に同じものをつくる場合の、石の限界だったからです。

客:けれどそれらは全てがオリジナルと考えられているのですよね?

Charles H. Hine Ⅲ:それはそうです。

客:JAZZの1部1部は、それがたとえ250部つくられたとしても、それぞれがオリジナルとして考えられているということですか?

Charles H. Hine Ⅲ:もちろん。

客:なのに一方、それより多い部数だと、1部1部はオリジナルだとは言えなくなるということですか?オフセット印刷や、その他の製作方法での大部数発行もやはり1部1部はオリジナルだとは言えないということですか?

Charles H. Hine Ⅲ:それについては、全ての部数がどちらにしろ限られている、という考え方に基づいて、全てオリジナルだというように考えたらどうでしょうか、と言いたいです。とにかく、そのものの質だけに注目すればいいのだと思います。




このブログ内で行われている私の翻訳は、通常仕事で受けるときほどの正確さは追求しないことにしているし、誤訳もあるかもしれない。けれど、この質疑応答の迷走ぶりは私のせいでは無い、と思う。


「人口50億にしてみれば、7部も7,000部も一緒だ!部数なんて関係ない!中身がアートならそれはアーティストブックなのだ!」と言いつつも、自分のコレクションに関しては部数を気にしているという。

ちなみにこの後は違うお客さんとの質疑応答に移ってしまうのでこの話はここで終わってしまうのだが、このお客さんは納得していないだろうなー、と思う。

(余談ですが、シンポジウムなどの質疑応答って、質問に対して答えがかみ合っていないことがあまりに多いように思う。その他大勢の観客として聞いていると、質問者もパネラーも、そしてどこでこのぐだぐだな議論を切って次の議論にうつるか考えあぐねている司会者も、みんなかわいそうになってきてしまう)



さて、本題に戻る。
アーティストブックにおいて「オリジナル」とはなんだろう。
逆に、「オリジナル」という概念が成立しない場合、それは「アーティストブック」とは呼べないのだろうか?


たとえば。

アーティストが自分の手で絵なり言葉を書き、自分の手で製本した、世界で1部しかないものはアーティストブックだし、それはオリジナルだ。

これは多分皆異論は無いはず。


では、以下の場合はどうだろう。

①アーティストが手書きで内容を描き/書き、自分で製本をしたものを、50,000部製作した場合。

②アーティストが手書きで内容を描き/書き、製本を業者に頼み、1,000部製作した場合。

③アーティストの絵/言葉を自宅のインクジェットプリンターで印刷し、自分で製本したものを300部製作した場合。

④アーティストの絵/言葉を印刷会社にデータで入稿し印刷してもらい、製本も業者に頼み、100,000部製作した場合。

⑤アーティストの絵/言葉を印刷会社にデータで入稿し印刷してもらい、製本は自分で行い、50部製作した場合。



など。他にも組み合わせはいろいろあるはず。


内容が手書き/自宅で印刷/業者が印刷
手製で製本/業者が製本
部数が1/50/300/1,000/10,000/100,000

これらの順列組み合わせ。他にも想定できる条件があるかもしれない。


結論から言うと、私はどういった条件であれ、
アーティストがオリジナルな思想を持って、なんらかのこだわりを持ち、自らが「本」だと主張するものを作ったのならば、それはアーティストブックだと考えているし、その一部一部はオリジナルとして扱っていいのではないか、と考えている。


もちろん、同じ作家の1部しかないアーティストブックと10,000部あるアーティストブックでは、1部しか無いものの方が貴重であり、内容の質が仮に同程度であれば、無論その1部の方がオークションでは高値がつく、というこもわかる。しかし、だからといって10,000部あるアーティストブックに価値が無かったり、ましてや「アーティストブックでは無い」という風には言えないと思う。


けれどどうなんだろう。これについてはまだまだ考えなければ、と思っている。


一般的にどう考えられているのか、職業的立場によってこのことに関する考え方がどう変わってくるのかはとても興味深いし、そういった意見をいろいろ知ることによって、私の考えも変わっていくのかもしれない。



長くなりましたが、とりあえず。このへんで。
[PR]
by midori_sakai | 2006-03-15 01:52 | 全般的なこと

Books as Art <1991> [5]

タイトルの書名"Books as Art"の隣に、出版年の<1991>を加えることにした。

これまでそれほど意識していなかったのだが、やはりシンポジウムの中身を読んでいると、たとえばITを中心としたニューメディアに対する考え方などに、月日の流れを感じたのだ。よく考えたら1991年は、もう15年も前。湾岸戦争があり、ポケベルすら無く、Win95はまだ開発途中で、私は11歳だった。それは時代錯誤な点があって当然だろう。


それでも私はこの本から学んだことは多いので、これからも古い文献だってどんどん活用していきますよ。
この分野は資料が豊富なわけでは無いのだから。


では、今日の引用。
(実は他にも引用したい部分があって、ポイントとして避けては通れないと思っていることについて客とパネラーがやりとりをしているのですが、訳しきれなかったので、また今度。乞うご期待!というわけで、今日の引用。)


"Books as ART" Boca Raton Museum of Art
Addendum p.Ⅶ-


Norman B. Colp:
...it's a form that is very personal, but the subject matter is something the artist wants to share with other people. Instead of making a painting or sculpture, there is an intimacy about the book even if it is in little object, whether you open it up as a page by page presentation or as an accordion format.

Norman B. Colp:
・・・(本という形態は)とてもパーソナルな形態であり、しかしその主題をアーティストが人々と分かち合いたいものなのだと思います。絵画や彫刻をつくる代わりにつくられる本というものには、それが表紙を開いてページからページへと捲りながら進めるものだろうと、ページがアコーディオンのようになっているものだろうと、どんなに小さなオブジェクトだとしても、なにか親密さといったものがあるのです。

[PR]
by midori_sakai | 2006-03-14 01:41 | 全般的なこと

Books as Art <1991> [4]

"Books as ART" Boca Raton Museum of Art
Addendum p.V-

"BOOKS AS ART: THEIR FORM AND CONTENT IN THE 20TH CENTURY"
というシンポジウムが1991年9月20日、19:30~Wimberly Library, Florida Atlantic University, Boca Raton で行われたらしい。その模様が巻末に。

参加者は、

Dr. William Miller (Director of Libraries, Florida Atlantic University)

Timothy A. Eaton (進行、本展覧会キュレーター)

Norman B. Colp(本をつくるアーティストで、NYのCentre for Book Artsの前キュレーターでもある)

Charles H. Hine Ⅲ(SanFranciscoのLimestone Press とHine Editions を創設)

Buzz Specto(展覧会にも出品していた作家。ArtCenter College in Pasadena, Californiaで教鞭もとる)

Alexandra Anderson-Spivy (ライターであり、エスクワイア・マガジンのContributing Art editor でもある。 アーティストブックをアーカイブしているNYのFranklin Furnaceの取締役)

Marvin Sackner& Ruth Sackner(アーティスト・ブックと関連作品をの巨大コレクションを保持するthe Ruth and Marbin Sackner Archive of Concrete and Visual Poetryをマイアミに創設、運営)


といった顔ぶれ。(肩書きは当時)


完全にアーティストブック(総称するときに不便なのでとりあえずれを使おうかしらとなんとなく更新何回目かにして思っている)好きによるアーティストブック好きのためのアーティストブックについてのシンポジウム。アツイですね~。しかもシンポジウム会場が、大学の図書館ですから。たまりません。


内容については明日以降。気になったコメントを紹介していきたいと思います。
[PR]
by midori_sakai | 2006-03-13 01:33 | 全般的なこと