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Angela Lorenz / www.angelalorenzartistsbooks.com

アーティストブックに言及した情報というのは、日本語で探すと本当に少ない。
けれど、英語のものはちょこちょこあるので、そういうのもちょっとずつ読んでいこうと思っている。


Angela Lorenz / www.angelalorenzartistsbooks.com

このAngela Lorenzという人はアーティスツ・ブックス(と、彼女は呼ぶ。)を一貫してテーマに据えて作品を製作してきたアーティストであり、このサイトでは、彼女の作品や経歴とともに、「アーティスツ・ブックとは何か」といった内容のページもある。

Artist's Books - For Lack of a Better Name

アーティスツ・ブックス ――ましな名前がみつからなくて

実はこの全文をこつこつ訳していたのだけれど、なんだかこうまとまらなく、面倒臭くなってしまったのでやめた。これはもちろん私個人の精神的・肉体的コンディションに依拠するとことも多分にあるのだけれど、この文章自体のせいでもある。要するに、ある意味で私と同じなのだ。割とダラダラとアーティスツ・ブックスはどう定義され得るか、どういう特徴があるか、購買層はどういった層か、そういったことが書いてあるのだけれど、そんなことはこのブログでゆっくりやっていけばいいことで、何も今回一回分で全てを説明しようとする必要はないし、そんなのなんだかつまらなくなってしまうではないか。それに長いんだもん。疲れちゃう。


というわけなのだが、その中で一箇所印象に残った部分があったので、そこだけ引用します。


The various issues raised above, while attempting to illuminate the genre, also demonstrate why you may have never heard of artist's books. The awareness of artist's books is surely increasing, judging from the astounding number of courses, even university degrees, offered in the book arts around the world, and due to the great number of exhibitions in libraries and museums. Not to mention the numerous book arts organizations and resources on the internet. But the road is slow, and many an enthusiastic gallerist, dealer or venue dedicated to artist's books over the last 25 years closed its doors due to the difficulties of selling artist's books while maintaining overhead costs. To be fair, this is true of contemporary art venues in general and independent bookstores as well. Even the most famous artist's book venue in the world, Printed Matter in New York City, has struggled with chronic debt, unable at times to pay artists for works sold. One of Printed Matter's founding board members, the art critic Lucy Lippard, once confided in me that when they opened, they thought artist's books would soon be found in every corner drugstore. "Boy, were we wrong," she added. Susan Herter of Herter Studios, during her tenure as editor at Chonicle Books in San Francisco, tried very hard to promote trade editions, or mass-produced approximations, of artist's books. Apart from the Griffin and Sabine series, which in fact did a lot to expand the general public's perception of the possibilities of book formats, Herter told me her efforts were unsuccessful.


上記にあげた様々な問題が、ジャンルについて解明しようと試みた結果であると同時に、多くの人がアーティスツ・ブックスという言葉を聞いたことが無いという理由を実証してもいる。アーティスツ・ブックスに関するコースがびっくりするほどいくつもできたり、ブック・アートに関する大学の学位まで世界中でできたり、図書館や美術館で展覧会がたくさん催されていることから判断すれば、アーティスツ・ブックスの知名度は確実に上がっている。しかし、歩みは遅く、アーティス・ブックスに貢献してきた多くの熱意溢れるギャラリスト、ディーラー、そしてスペースは、運営費をやりくりしながらアーティスツ・ブックスを売る、ということの難しさから、この25年間で、いくつも脱落した。公平を期するために言うと、これは一般的な現代美術関係の現場やインディペンデントなブックストアでも起きてきたことである。世界一有名なアーティスツ・ブックの現場であるニューヨークのPrinted Matterでさえ、慢性的に負債を抱え、作品が売れたアーティストに対しての支払いができないことすらあった。Printed Matterの創設者の一人である、美術評論家のLucy Lippardは、アーティスツ・ブックスはすぐにそこらじゅうのドラッグストアでも手に入るようなものになるんだと創設時には思っていたけれど、「いやあ、本当に私たちは間違っていたわ。」と最後に付け足し、そっと打ち明けてくれた。Herter StudiosのSusan HerterはサンフランシスコのChronicle Booksで編集者として在職中に、アーティスツ・ブックスの海外版や大量生産による擬似コピーをとても一生懸命に普及させようとしたが、一般の人たちの本のフォーマットの可能性に対する認識を広げるのに一役買ったGriffin and Sabine series以外の努力に関しては、Herterは私に失敗した、と告げた。



これは2002年に書かれた文章なので、今より4年前のこと、ということになる。
この4年間で、状況は少しは変わったのだろうか?
若輩者の私には、あまり変化は見られないので、誰かおしえてください。
寧ろ状況は悪化しているような気がするのが、気のせいならいいのだけれど。

けれど一方で。

何年も前から、もう、歴史は始まっている。
私たちがまだ同じところで燻っていたり、むしろ後戻りしていたとしても、
それすら歴史に組み込まれていると思えば、なんとなくいつかはどうにかなる気がしてくるから不思議だ。
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by midori_sakai | 2006-04-21 01:24 | 全般的なこと

内田春菊/装丁:野田凪/『愛だからいいのよ』

前回スピンの話をしたので、一応その流れで。


内田春菊/装丁:野田凪/『愛だからいいのよ』
出版社: 講談社 ; ISBN: 4062114046 ; (2002/07)


講談社のサイト (矢印をクリック)

この本は、表紙全体が内田春菊の顔になっています。
髪の毛の色がホワイト・ブロンド・ブラック・ブラウン、と4種類違う色の表紙があるのですが、
その色にぴったり合わせたスピンがついているのです。
しかも12本も!
髪の毛ってことなんですね、スピンが。

DTPWORLD別冊 BOOK DESIGN vol.2 に、この本について載っていて、
それによると、12本のスピンをつけることは機械ではできず、スピンづけは手作業で行われたよう。

手作業!本当に恐れ入ります。
しかも金色のスピンは、色が見つからず特注で染め上げたそう。


嗚呼、この記事読んでたら感動したので、以下抜粋します。


DTPWORLD別冊 BOOK DESIGN vol.2 p027

また、店頭でスピンを本の中に挟みこむと、髪の毛の雰囲気がなくなってしまうという問題もあった。外側に出ていること、無造作に乱れていることが条件となる。そのため、一冊ずつスピンを整えながら、上にビニールのカバーをかけて梱包した。


泣けます。本当にすごいことです。これだけ手間暇かけてつくられた本は、本当に幸せ。
そして内田春菊、幸せ者ですね。ほんとに。どアップの顔の写真を表紙にした甲斐ありましたね。

ちなみにこの装丁は、第83回ニューヨークADC展の金賞にも選ばれています。これも最早数年前のことですけれど。


何も今更取り上げなくても、という声もあるかもしれませんが、
気にしません。好きなものは好きなのです!
髪の毛好き乙女ということも大いに影響しているかもしれませんが、
装丁に凝った本の中でも、この本はかなり好きです。
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by midori_sakai | 2006-04-10 04:19 | 注目の本

望月マテリアル有限会社

定義ばかり追いかけてると、ちょっと息が詰まりそうなので。
それはゆっくり様々なソースを調べながら考えていきたいと思います。


で、その合間合間でアートや本に纏わる本屋/出版社/材料屋/展覧会/などなど
とにかくアートや本と関係があって、そして私がその都度紹介したいと思ったものや、調べてみたものなどを気負い無く紹介していこうと思います。


で、今日は、望月マテリアル有限会社。
と、名前を出してみても多分ほとんどの人は「?」となっていることでしょう。

これは、スピンの会社。正確に言うと、スピン以外にも花布(はなぎれ。ハードカバーの本の背のとこの上と下にちょっと布みたいなのがありませんか?それです。)なども扱っています。

スピンというのが何かということを一応説明しておくと、紐です。本のしおりになるものです。
コストダウンのために、今では文庫では新潮文庫にしかついていませんが、私は非常に不服に思っています。特に新潮社信者でもないのですが、文庫で同じタイトルが複数の出版社から出ている場合、私は迷うことなく新潮社から買います。理由はひとつ。スピンがついているから。あれほど便利でかつ美しく、品も歴史もあるものをコストダウンなんていうどうでもいい理由で辞めてしまう他の出版社文庫部のセンスを疑います。

嗚呼、つい熱くなってしまいましたが、この望月マテリアルには、以前私がスピンを使用した作品を製作したときにお世話になりました。神保町にあるその店で色とりどりの見本を見せられたときの興奮は忘れられません。あと衝撃的だったのは、スピンの値段。

150mで210円。


絶対に桁を一個間違えているはず!と思い、電話で何度も確認しました。


もうひとつ、この会社を訪れて思ったことは、ああ、この会社は本の紙の部分以外のものを取り扱う会社なのだな、ということ。あまり普段は本を、「紙」と「それ以外」という風に分けて考えることは無かったので、なんだか新鮮だったことを覚えています。一般的な王道の「本」というものをイメージするとき、つい「本は紙でできている」と考えてしまうのだけれど、スピンも花布も、紙ではない。分類的には布に近いものです。紙+布の本が流通に載っているのならば、紙+鉄もあり?とか。そんな簡単な話ではないとしても、「紙だけでできているわけではない」という風に少し考え方を改めることで、可能性が急に開けるような、イメージの転換を起こせるような気がしたのでした。



これはずっと言っていることなのですが、いつかスピンを大量に使用した作品をつくります。イメージはもうあるのです。それまで、せめて新潮文庫はスピンをつけ続けていてくれますように。
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by midori_sakai | 2006-04-03 16:17 | material