さて、今日のテーマ。
「アーティストブックにおいて、オリジナルって何?」 以下、またシンポジウムの模様から引用。 "Books as ART" Boca Raton Museum of Art Addendum p.Ⅶ- Marvin Sackner: ...In our own collection, as we define an artist's book, we have a classification system too, and we usually define an artist's book as something that is limited in edition size. In otherwords, to me, it is not a run of 3000, 5000, 50,000 books even though an artist may have made that book. An artist's book, for me, is an edition of 1, an edition of 3, an edition of 5 and not much more than that. So that I view it, and I'm in agreement with the other people who've said it, it's a private kind of thing where the artist can communicate in a private way with the observer. まずシンポジウム内でこういう発言がある。 数ページにおよぶシンポジウムの記事を読んだが、私が一番ひっかかったのはやはりこの発言だった。でもきっとみんなそうなんだね。質疑応答で観客から真っ先に質問されたのは、やはり「部数でアーティストブックを定義するのか?」ということだった。(何故か回答はMarvin Sacknerではなく、Charles H. Hine Ⅲがしていて、なんとなく納得いかないのだが。) というわけで、以下質疑応答の模様。 Audience: ...It was mentioned that some of the books are in limited editions of 1,3,6 and so forth. When I first saw this exhibition announced, BOOKS AS ART, somehow it conjured up in my mind the type of books my wife and I collect which are livre d'artiste or beau livre. We usually think of those as perhaps Matisse's JAZZ, or Leger's Le Cirwur, Picasso's Carmen, or whatever. They are not limited to that small a number but are in editions of 100 and up to 250. Was this prticular exhibit aimed at that type of book or exactly what? このブログ内で行われている私の翻訳は、通常仕事で受けるときほどの正確さは追求しないことにしているし、誤訳もあるかもしれない。けれど、この質疑応答の迷走ぶりは私のせいでは無い、と思う。 「人口50億にしてみれば、7部も7,000部も一緒だ!部数なんて関係ない!中身がアートならそれはアーティストブックなのだ!」と言いつつも、自分のコレクションに関しては部数を気にしているという。 ちなみにこの後は違うお客さんとの質疑応答に移ってしまうのでこの話はここで終わってしまうのだが、このお客さんは納得していないだろうなー、と思う。 (余談ですが、シンポジウムなどの質疑応答って、質問に対して答えがかみ合っていないことがあまりに多いように思う。その他大勢の観客として聞いていると、質問者もパネラーも、そしてどこでこのぐだぐだな議論を切って次の議論にうつるか考えあぐねている司会者も、みんなかわいそうになってきてしまう) さて、本題に戻る。 アーティストブックにおいて「オリジナル」とはなんだろう。 逆に、「オリジナル」という概念が成立しない場合、それは「アーティストブック」とは呼べないのだろうか? たとえば。 アーティストが自分の手で絵なり言葉を書き、自分の手で製本した、世界で1部しかないものはアーティストブックだし、それはオリジナルだ。 これは多分皆異論は無いはず。 では、以下の場合はどうだろう。 ①アーティストが手書きで内容を描き/書き、自分で製本をしたものを、50,000部製作した場合。 ②アーティストが手書きで内容を描き/書き、製本を業者に頼み、1,000部製作した場合。 ③アーティストの絵/言葉を自宅のインクジェットプリンターで印刷し、自分で製本したものを300部製作した場合。 ④アーティストの絵/言葉を印刷会社にデータで入稿し印刷してもらい、製本も業者に頼み、100,000部製作した場合。 ⑤アーティストの絵/言葉を印刷会社にデータで入稿し印刷してもらい、製本は自分で行い、50部製作した場合。 など。他にも組み合わせはいろいろあるはず。 内容が手書き/自宅で印刷/業者が印刷 手製で製本/業者が製本 部数が1/50/300/1,000/10,000/100,000 これらの順列組み合わせ。他にも想定できる条件があるかもしれない。 結論から言うと、私はどういった条件であれ、 アーティストがオリジナルな思想を持って、なんらかのこだわりを持ち、自らが「本」だと主張するものを作ったのならば、それはアーティストブックだと考えているし、その一部一部はオリジナルとして扱っていいのではないか、と考えている。 もちろん、同じ作家の1部しかないアーティストブックと10,000部あるアーティストブックでは、1部しか無いものの方が貴重であり、内容の質が仮に同程度であれば、無論その1部の方がオークションでは高値がつく、というこもわかる。しかし、だからといって10,000部あるアーティストブックに価値が無かったり、ましてや「アーティストブックでは無い」という風には言えないと思う。 けれどどうなんだろう。これについてはまだまだ考えなければ、と思っている。 一般的にどう考えられているのか、職業的立場によってこのことに関する考え方がどう変わってくるのかはとても興味深いし、そういった意見をいろいろ知ることによって、私の考えも変わっていくのかもしれない。 長くなりましたが、とりあえず。このへんで。
by midori_sakai
| 2006-03-15 01:52
| 全般的なこと
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